ラムバサダーのご紹介 / 小林直矢シェフ

「羊肉は、半身を豪快に焼くのが好きです。シンプルなのがいい。羊肉をさらに美味しく食べるため、そのポテンシャルを料理する前にいかに高められるかを考えています」

そのために、小林シェフは羊肉を昆布で締めているそうだ。ここ、フレンチレストランですよね? 想像もしてなかった発言に驚かされる。確かに、旨味が加わった羊肉は焼いただけでも存在感がある。塩コショウ、バターといった調味料ではなく、適度に水分が抜け、旨味が入った羊肉は違和感なくメインとしてコースで魅力を発揮している。


▲豪快なオージー・ラムの腿のロースト。シンプルながら羊の旨味が引き出されている一品。

小林シェフにとって羊肉は「原動力」だという。昆布や出汁といった伝統的なフランス料理にはなかった素材や技法を身につけるのも、この原動力によるものだろう。また、フレンチの枠にとらわれない技法を駆使するその自由な姿勢こそ、小林シェフの魅力。素材を活かした料理は添えてある一口サイズの野菜まで、メインにも引けを取らない存在感がある。

「赤身の美味しさを引き出すおもしろさがあるのが羊肉です。羊肉はオーストラリア産も使いやすくて好きです。国産も今後、使ってみたいですが、量がまだ少ないですからね。羊肉はまだまだ引き出せていない魅力があると思うので、挑戦していきたい食材です」


▲絶えず新しいことに挑戦し続ける小林シェフ。いつも驚かされる。

会話の中で飛び出してきた彼の今後の料理のテーマは「健康」。

「『肉のパイ包み』って伝統料理がありますが、美味しいし作るのも嫌いじゃないけれど、食べると胃に重たいじゃないですか。これからは、食べて健康になれるような料理が作りたいんです」

羊肉は赤身が多く、脂肪も身体につきにくいと言われる。このテーマにも一致する食材ではないだろうか。フランスや日本の伝統的フランス料理店でも修行し、正統的なフレンチを知りつつも、日本で手に入る食材や身近な技法で挑戦を続ける小林シェフ。さらにオーセンティックなフレンチという枠を軽やかに飛び越える自由な発想から生まれているのだろう。実は、フレンチにはない辛みを特徴とする中華の四川料理にも興味があるとのこと。次の展開に予想もつかない。

小林 直矢

エコール キュリネール国立(現エコール辻東京)卒業後、レストラン「マルディ・グラ」(銀座)、「コム・ダビチュード」(池尻大橋)を経て、レストラン「オマージュ」(浅草)にてリニューアル時より勤務し副料理長として貢献。
2011年に同店がミシュラン1つ星を獲得したことを機に退職し、渡仏。南仏のミシュラン2つ星レストラン「オステルリー ジェロンム」、パリの新進気鋭レストラン「GARANCE」での経験を経て、2013年帰国後、2014年9月より「Pirouette」シェフに就任し、現在に至る。
モットーは“素材を活かす”こと。生産者との関わりにこだわりを持ち、食材との繋がりを大切にしている。非日常のものを創り上げるが故に、日々作られる現実のものに直接触れたい、という強い思いがある。

http://www.pirouette.jp/

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