「羊にごはんを食べさせてもらっている」と語る関澤氏は、麻布十番にある「羊サンライズ」のオーナーである。彼はサラリーマン時代に地元・茨城県にできたジンギスカン店で羊肉の美味しさに目覚めてから全国100軒以上のジンギスカン店を巡り、北海道をはじめジンギスカン店の修行期間を経て、勝負するなら東京でと羊サンライズを開いてしまった。
同店ではオーストラリア産をはじめ国産、フランス産など様々な産地の羊肉が食べられる。特に、生産量が少ない国産羊肉は北海道をはじめ、それぞれの生産者を直接訪ね、断られても粘り強く交渉した結果、取引ができるようになったという。ジンギスカンは基本、焼くだけというシンプルな料理だからこそ、関澤氏が選び抜いた羊肉の味が堪能できる。
2016年に第3期ラムバサダーに任命され、研修としてオーストラリアで朝昼晩と羊肉を使ったフルコースを食べた。この旅を通じて、羊肉を食べるならジンギスカンという料理が世界で一番おいしいと再認識したというくらい、とにかくジンギスカンが大好きなのである。
オーストラリアではもう一つ収穫があった。南オーストラリアで生産されているパスチャーフェッドラムとの出会いだ。クローバーやライグラスといった栄養豊富な牧草でのびのび育った羊の肉は、羊サンライズへ客としてきた有名シェフも太鼓判を押す味だという。
店には同業者も多く訪れ、パスチャーフェッドラムをはじめ、関澤氏が実際にやり取りしている羊肉の取引先は隠さずどんどん共有しているという。というのも、日本人一人当たりが食べる羊肉は、年間たったの200グラム、羊肉全体を盛り上げなければまた一過性のブームが過ぎ去った後、一気に羊肉の消費が落ち込むのではないか、と懸念する。業界全体を盛り上げることが、国内の生産者をはじめ、羊をめぐる皆が幸せになれる方法なのだ。先のパスチャーフェッドラム、数ヶ月で輸入量が5倍になったというから、驚きである。
「羊は捨てるところが全くないんです」という関澤氏、次は、現在、捨てられているラム皮を製品化することを計画中だ。ジンギスカン、羊に留まらず「羊総合商社」として活動を広げる、羊肉業界全体を考える関澤氏の動向から目が離せない。
関澤 波留人
羊SUNRISE オーナー
ジンギスカンの名店「札幌成吉思汗しろくま札幌本店」で修行。2015年同新橋店店長に就任。
退職後、国内の様々な緬羊牧場を自家用車で車中泊3,000km走破し訪問。オーストラリアの牧場も視察した後、2016年、麻布十番に国産・オーストラリア産など様々な羊肉を揃えたジンギスカン店「羊SUNRISE」を開業。2018年、「TEPPAN羊SUNRISE」を神楽坂にオープン。
「羊の夜明け」という店名の由来を実現すべく国内外多くの羊飼いと向き合い、品種、月齢、飼養管理方法の違いによって生まれる味わいを、羊の栄養価や歴史も含め「羊肉をめぐる冒険」としてお客様に提供。
1982年4月生まれ。戌年・牡羊座の男は、牧羊犬の如く日々羊を追求している。