さあ、いよいよ羊業界がざわざわする「未年」が近づいてきました。今回は干支という中国の文化と、羊が日本にいつ来たのか?この前の未年で何があったのか??などを深堀りし、今までのひつじ年を復習し、来年のひつじ年に備えるまとめを作ってみました。12年に一度のひつじ年にみんなで備えましょう!

実物より先に知られていた羊

羊は日本列島の在来動物ではなく、古代の日本で継続的に飼育されていたことを示す確かな資料もありません。しかし、日本人が羊という動物を知らなかったわけではなく、中国から伝わった漢字や書物、暦の中に「羊」が登場し、十二支では「未」に対応する動物とされていたからです。日本では、実物の羊が身近に存在するよりも先に、知識や図像を通じて、その存在が知られていました。虎や龍などと同じで「概念はみんな知っているけど見たことがない物」だったのだと思われます。

日本に羊が渡来したことを示す最古の記録は『日本書紀』です。推古天皇7年(599年)、百済からラクダ1頭、ロバ1頭、羊2頭、白いキジ1羽が献上されたと記されています。弘仁11年(820年)にも新羅から複数の羊が贈られた記録がありますが、いずれも珍しい献上動物であり、羊の飼育が日本に定着したわけではありません。個人的にですが、中華圏は羊と山羊の区別をかつてはしていなかったので、長時間船で運ぶことを考えると、もしかしてヤギだったのでは・・・・と考えたりもしています。ある程度本格的な牧羊が始まるのは、明治政府が欧米式の畜産を導入してからです。日本人にとって羊は長い間、身近な家畜ではなく、大陸から伝わった文化や知識の中にいる動物だったのです。

なぜ中国の十二支に羊が入ったのか

このあたり中国の古代思想と絡んでいて仕組みの説明などが難しいので割愛しますが、十二支の「未」は、もともと年・月・日・時刻や方角を示すための記号で、文字自体が羊を意味するわけではありません。後に十二支へ12種類の動物が対応づけられ、「未」には「羊」が配されました。

中国で出土した秦代の竹簡には、現在の十二生肖につながる動物と十二支の組み合わせが記されています。後漢の王充が著した『論衡』では、現在とほぼ同じ形で未と羊の対応が確認できます。遅くともこの時代には「未=羊」という組み合わせが知られていたことになります。もしかしたら当時の羊業界の人も「来年は未年だね!」などと話していたのか??と思うとワクワクします。

古代中国において羊は、馬・牛・豚・犬・鶏とともに「六畜」に数えられる重要な家畜でした。肉や皮などをもたらすだけでなく、祭祀の供物としても用いられ、甲骨文や青銅器にも数多く登場します。羊が十二支の動物になった背景には、当時の中国社会において広く知られ、生活や祭祀と深く結びついた存在だったという事実があります。六畜みんな十二支入りしていますし。

ただし、12種類の動物を誰が、どのような基準で選び、なぜ羊を「未」に割り当てたのかを説明する同時代の記録は残っていません。そのため、羊が選ばれた具体的な理由までは断定できません。また、中国語の「羊」はヒツジだけでなくヤギも含む広い呼称です。中国では地域によってヤギまたはヒツジとして表現されますが、日本では主としてヒツジと理解されるようになりました。(昔の十二支の羊の絵で明らかにヤギがあるのはこのあたりの事情によるものと思います)

前回の未年2015年には何が起きたのか

さて、では12年前に何が起こったのか。色々と検索してAIなどにも探してもらいました。24年前は情報がWEB上に少なかったので前回の未年の説明でご勘弁ください。

前回の未年である2015年には、日本でも羊を題材にした商品や催事が数多く登場しました。百貨店では羊にちなんだ福袋が販売されたほか、価格2,015万円の「黄金の羊」も登場。メリーチョコレートは「2015年は“メリー”の年」として、羊のキャラクター「メリーちゃん」を使った商品やキャンペーンを展開しました。マザー牧場では羊の群れで「未」の文字をつくる催しが行われるなど(これは毎年ですが)、企業や観光施設が未年を販促や情報発信に活用しました。羊毛製品、ぬいぐるみ、菓子、酒、年賀用品、縁起物など、羊をモチーフにした商品も広く販売されました。

羊肉の分野でも、未年は情報発信の好機となりました。当時は羊肉専門店に加え、中国、モンゴル、中東など世界各地の羊料理が少しずつ知られるようになり、メディアでも羊肉が取り上げられました。

2014年に始まった「羊フェスタ」も、2015年には未年という追い風を受け、下北沢で開催。ラムチョップをはじめとする多様な羊料理を紹介し、「羊肉はジンギスカンだけではない」という楽しみ方を発信しました。予想の2倍人が来てしまい仰天したことを今でも覚えています。

ただし、2015年に干支だけを理由として、羊肉消費が全国的に爆発したとまではいえません。日本の羊肉輸入量は、2004~2005年のジンギスカンブーム時には年間3万トンを超えましたが、2015年前後はおおむね2万トン前後でした。2015年は、一時的な大ブームが起きた年というより、羊肉を楽しむ消費者、専門店、生産者、輸入業者、イベントなどがつながり、その後の広がりを生み出す節目になった年なのではないかと。本当にこの時は年末年始のちょっとした盛り上がりで終わってしまいましたが、この辺りよりメディアやお店などで羊がちらちらと目につくようになったことは確かです。

2027年の未年に向けて

さあ、来年の話をしましょう!次の未年は2027年です。前回の2015年からの12年間で、日本の羊を取り巻く環境は大きく変わりました。羊肉専門店は増え、ジンギスカンだけでなく、羊肉串、火鍋、煮込み、ビリヤニ、フレンチやイタリアンなど、各国・各地域の羊料理が日本で食べられるようになりました。スーパーやインターネットでもラム肉を購入しやすくなり、国産羊肉や国内の羊飼いに対する関心も高まっています。羊毛、クラフト、牧場、地域振興など、食以外の分野でも羊に関わる活動が広がりました。そう、12年前と比べて、消費者が羊肉に触れる機会や楽しみ方の選択肢は大きく広がっているのです。

2015年が「羊に注目を集め、仲間を増やした未年」だったとすれば、2027年は、その間に育ってきた日本の羊文化を社会へ広く示す機会にできます。企業には単に羊の絵を使った期間限定商品だけでなく、羊肉料理の提供、国産羊毛の活用、牧場や生産地域との連携など、実際の羊文化拡大につながる取り組みを期待したいところです。と言いますか、取り扱う業種ならやらないといけない事です。

2027年の未年を、一時的な「干支の羊ブーム」で終わらせず、羊肉、羊毛、牧場、地域、文化をつなぎ、その魅力を次の12年へ残していく年に関係業界みんなでしていきましょう!

※本記事では、歴史的な資料や記録をもとに、筆者の考察も交えて紹介しています。歴史的な解釈については諸説あり、記載内容が唯一の定説とは限りません。

主な参考資料
・天王寺動物園「羊に纏わる歴史について」
・農畜産業振興機構「米国産めん羊・山羊肉の日本向け輸出が再開」