輸入で99%以上が賄われている日本のラム肉ですが、その中でも6割~7割がオーストラリア産。その輸入の推移を見ていると、日本における羊肉の流れがわかってきます。まずは、こちらの図をご覧ください。
1994年から2020年までのオーストラリア産の羊の輸入量のグラフです。ぱっと見「95年輸入量多い!」と思われるかもしれませんが、よく見ていただくと、こちら、輸入量の大部分はマトンが占めています。昔価格がとても安くお手頃だったマトンは加工肉の材料として多く輸入されていました。現在は羊肉価格の高騰でマトンも価格が上がっており、羊肉を加工品に使う需要がかなり減り、ジンギスカンや料理で食べられるラム肉の輸入がマトンを逆転しています。それ故、われらの口に入るラム肉の部分を見ていただけると、グラフに潜む真実が徐々に見えてくるのです。
2002年のBSE問題で、米国産の牛肉が輸入できなくなり、その代わりとして羊肉の輸入が盛んになりました。この時は、日本ではあまり羊肉を食べる習慣がなく、わかりやすい「ジンギスカン」をPRすることにより牛の代わりに輸入した羊肉を各企業が売ろうとします。その流れを受けて2004年のジンギスカンブームが起こります。この時が、「マトンとラム」の輸入量が大きく変わった節目で、加工原料から食材へと変わった瞬間でもあります。
2014年の未年で大きく需要を伸ばした例外もありますが、2019年までは輸入量は微増をキープし、2020年はコロナの影響もあり輸入量が落ち着くという流れが見えてきます。
羊肉の需要の高まりを受けての価格の高騰、発展途上国の購入力の強まりによる、国際的な羊不足(欲しくても買えない)など、羊界の動きは近年激しい中で、2019年まで微増をキープで来ていたことは、需要の着実な伸びを表すものです。
グラフからは見えない、羊業界の流れを考えながら見ていただくと、このグラフの別の見方が見えてきます。このグラフが2022年はどうなってくのか??楽しみでもあり、怖くもあります。来年分が出ましたら、またこちらで解説させていただきますね。
この記事を書いた人
ラムバサダー 菊池 一弘
羊肉の消費者団体、羊齧協会創業者にして主席(代表)。
羊肉料理を素人がおいしく楽しく食べられる環境作りを行うべく、多種多様な羊肉普及のためのイベントを行う。
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